「サブドメイン」と「サブディレクトリ」は、技術的には大きく異なる概念です。しかし、Webサイト制作においては、どちらを使おうかと迷ってしまうシーンも少なくありません。
本記事では、サブドメイン・サブディレクトリの違いと、それぞれのメリットを説明します。そのうえで、「どちらを使うべきか」という疑問にSEOの観点から答えていきます。
サブドメインとサブディレクトリ
まずは、サブドメインとサブディレクトリの基本的な違いを理解しましょう。
例として、独自ドメイン「example.com」でコーポレートサイトを運営しているとします。この場合、トップページのURLは、次のようになっているはずです。
(または、https://www.example.com)
このWebサイトに「マイページ(mypage)」を追加する場合、サブドメインとサブディレクトリのどちらを使うかでURLが変わります。
https://mypage.example.com
サブディレクトリの場合:
https://example.com/mypage/
(または、https://www.example.com/mypage/)
サブドメインを用いると、メインサイト(この例ではコーポレートサイト)とは別に、新たなWebサイトのトップページ用URLを得られることがわかるでしょう。つまり、サブドメインには1つのトップページと、その下層ページを置くことができます。
これに対して、サブディレクトリは既存サイトの下層ページをまとめて、構造を整理するための仕組みです。メインサイトに追加したサブディレクトリ内のページはすべて、メインサイトの下層ページとなります。
なお、サブドメインのWebサイトには、さらにサブディレクトリを追加してもかまいません。以下は、マイページに「プロフィール(profile)」機能を追加する場合の例です。
https://mypage.example.com/profile/
このように、独自ドメインを所有していれば、その配下にサブドメインのWebサイトを構築できます。また、メインサイトでもサブドメインのWebサイトでも、一連の下層ページをサブディレクトリでまとめることが可能です。
サブドメインのメリットとデメリット
サブドメインとサブディレクトリには、それぞれのメリット・デメリットがあります。
ここでは、サブドメインを使用することで得られるメリットと、事前に考慮しておかないとデメリットになってしまうかもしれない点を説明します。
サブドメインのメリット
メインサイトから独立したWebサイトを構築できる点が、サブドメインのメリットです。独立しているとはいえ、サブドメインは独自ドメインの配下にあります。
そのため、サブドメインのWebサイトは以下のようなニーズに適しています。
- メインサイトと異なるテーマを取り上げたい
- メインサイトとは異なる方法で管理したい
- メインサイトとの統一感を、ある程度もたせたい
つまり、メインサイトとは毛色が異なるコンテンツにはサブドメインが向いています。ただし、サブドメインのWebサイトは、メインサイトと関係があるように見えるでしょう。メインサイトを知っているユーザーには、新規コンテンツでも安心して利用してもらえます。
また、サブドメインは、削除してもメインサイトに大きな影響を与えません。期間限定のプロジェクトやキャンペーンのように、「終わりがある」「期限がある」催しにも活用しやすいでしょう。
さらに、サブドメインのWebサイトは、メインサイトとは別のサーバーでも運用できます。ショッピングカートなどの外部サービスと連携させたい場合も、サブドメインを用いると便利です。
サブドメインのデメリット
Webサイトの構成としては、サブドメインよりもサブディレクトリのほうがシンプルです。サブドメインによるWebサイトの運営では、ある程度の知識がないと思わぬコストが発生してしまうこともあります。
例えば、すでに独自ドメインを取得しているのであれば、サブドメイン自体の作成に費用はかかりません。ただし、サブドメインのWebサイトにも、メインサイトと同様にサーバーが必要です。レンタルサーバーを利用している場合は、プランによっては割り当てられるサブドメインの数が制限されていることもあります。
また、サブドメインに対応するSSL証明書の発行に、追加の費用がかかることもあるでしょう。SSL証明書は「https」で始まるURLに必要なものであり、Webサイトにアクセスするユーザーを保護するためにも欠かせません。
サブディレクトリのメリットとデメリット
サブドメインと同様に、サブディレクトリの使用にもメリットとデメリットがあるので説明します。
サブディレクトリのメリット
サブディレクトリには、Webサイトのコンテンツを整理・分類できるメリットがあります。ページ数が増えていくなかでも管理が煩雑になるのを防いだり、サイト全体の構造を統一しユーザーにわかりやすく情報を提示したりするのに役立つでしょう。
Googleは、専門性のあるWebサイトを高く評価
します。そのためには、特定のジャンルのページを豊富にそろえるのが効果的なため、サブディレクトリが便利です。また、すでに運用しているWebサイトであれば、これまでのSEO評価が高いほどサブディレクトリにも良い効果をもたらすと考えられます。
なお、サブディレクトリを追加するのにコストはかかりません。サブドメインのように、思わぬコストが発生する心配はないでしょう。
サブディレクトリのデメリット
メインサイトと毛色の異なるコンテンツは、サブドメインに適していることを説明しました。コストの面などから、こうしたコンテンツでも「サブディレクトリで追加すれば十分だろう」と考えたくなるかもしれません。
しかし、1つのWebサイトに複数のテーマの記事を詰め込むのは避けたほうがよい
とされます。サブディレクトリで整理したとしても、Webサイト全体としてのテーマがぼやけてしまうおそれがあるためです。特に、アピールしたい専門分野がある場合は、無関係な記事の割合が増えすぎるのは好ましくありません。
【サブドメインとサブディレクトリ】SEO観点からの比較
SEOの観点では、サブドメインとサブディレクトリの一方が、常に他方よりも優れているということはありません。どちらを選んだとしても、検索エンジンはWebサイトのコンテンツを把握できます。
ここでは、どちらを選ぶべきか迷いがちな以下のケースを取り上げて、SEOについて説明します。
- メインサイトとテーマが離れる場合
- YMYLジャンルを扱う場合
- オウンドメディアを構築する場合
メインサイトとテーマが離れる場合
メインサイトであまり扱っていないテーマのコンテンツを追加するときは、サブドメインの利用を検討しましょう。メインサイトへの影響を抑えながら専門性を高め、Googleなどの検索エンジンに評価されやすいWebサイトを目指せます。
例えば、以下のようなケースでは、サブドメインを選ぶのが自然でしょう。
- メインがコーポレートサイトで、新たにECサイトを構築したい
- メインが個人向けサイトで、新たに法人向けサイトを提供したい
YMYLジャンルを扱う場合
お金や健康のように人生に大きな影響を与えかねないテーマは、「YMYL(Your Money or Your Life)」と呼ばれます。GoogleはYMYLジャンルのWebサイトを評価する際、E-E-A-Tの面で高いレベルにあることを求めます。
つまり、十分に信頼できるWebサイトでない限り、お金や健康をテーマとするWebサイトが検索ランキングの上位を獲得するのは簡単ではありません。また、不用意にYMYLに関する話題を扱うと、Webサイト全体の評価が下がってしまうリスクもあります。
YMYLジャンルのコンテンツを追加するときは、サブドメインの利用を検討しましょう。これにより、YMYLジャンルを扱うリスクに、メインサイトが巻き込まれにくくなります。
関連記事:E-E-A-T(旧E-A-T)とは?Googleが重要視する4つのポイントと具体的な施策一覧を紹介
オウンドメディアを構築する場合
自社を広く認知してもらうために、オウンドメディアの立ち上げを検討している方は少なくないでしょう。オウンドメディアにサブドメインとサブディレクトリのどちらを用いるべきかは、戦略次第です。
多くの場合は、メインサイトのサブディレクトリを用いるのが自然です。一般的なオウンドメディアのコンテンツは、自社の製品やサービスに強く結び付いているためです。また、管理の手間を考えても、スモールスタートしやすいのはサブディレクトリのほうです。
ただし、規模によってはサブドメインが適していることもあります。自社メディアとして大きく育てることを目指すのであれば、サブドメインの利用も検討しましょう。
なお、オウンドメディアというよりも、中立的なコンテンツを扱うWebサイトにしたいケースもあるかもしれません。その場合は第三者の視点が必要になるため、新たに独自ドメインを取得して、既存のWebサイトに依存しない形をとる方法も考えられます。
関連記事:オウンドメディアとは?その役割や注目を集める理由、成功事例などを解説
サブドメインとサブディレクトリの選択基準
ここで、サブドメインとサブディレクトリの選び方について整理しましょう。大切なのは、「SEOの面で有利か」よりも、「用途に合っているか」で選ぶことです。
基本的には、「一連のコンテンツをまとめてサイト名やブランド名を付けたい場合はサブドメイン」と考えられます。サブドメインではサイト名をもつ個別のWebサイトを作れるのに対し、サブディレクトリに追加したコンテンツはメインサイトの一部となるためです。
また、以下の項目も判断基準となるでしょう。
- ニーズや目標:メインサイトとは異なるテーマや、独立したメディアを扱いやすいのはサブドメイン
- 手間やコスト:メインサイトと一緒に管理しやすく、追加のコストが発生しにくいのはサブディレクトリ
なお、第三者視点のコンテンツを扱いたい場合など、新たに独自ドメインを取得するのが良いケースもあります。
実装時の注意点
サブドメインとサブディレクトリの選択に失敗してしまうと、あとから修正するのは簡単ではありません。両者はURLに違いがあり、実装方法も大きく異なるためです。
ここでは、サブドメインとサブディレクトリの選び方で後悔しないための注意点を3つ紹介します。
- 提供するコンテンツを基準に考える
- メインサイトのSEO評価を活かす
- メインサイトがペナルティを受けていないか確認する
技術的な課題や、運用上の都合だけで決めないことがポイントとなります。
提供するコンテンツを基準に考える
すでに述べたように、サブドメインとサブディレクトリは用途から選ぶことが大切です。例えば、次のような理由だけで選ぶべきではありません。
- 管理する担当者を分けるために、サブドメインが良さそう
- 技術面に不安があるので、サブディレクトリが良さそう
こうした都合よりも、何をテーマとするコンテンツを、どのような形で提供すべきなのかを基準にしましょう。言い換えれば、常にユーザーの視点に立って検討するということです。
メインサイトのSEO評価を活かす
すでに運営しているメインサイト全体のSEO評価は、サブディレクトリにも受け継がれます。現在の評価が高ければ、新たに追加したコンテンツも大勢に見てもらえる可能性があるということです。既存の評価を今すぐ活かすことを最優先とするなら、サブディレクトリを使うのが最適だといえるでしょう。
とはいえ、Googleはユーザーに価値あるコンテンツを提供しようとする姿勢を高く評価します。ユーザーの視点に立って考えると、長期的にはサブドメインのほうが適しているケースもあるでしょう。サブドメインを用いたとしても、メインサイトからリンクを張るなどの方法で、これまでのSEO評価を活かすことは可能です。
メインサイトがペナルティを受けていないか確認する
メインサイトがGoogleからペナルティを受けているときは、注意が必要です。サブディレクトリでコンテンツを追加しても、検索ランキングの上位を獲得するのは難しいでしょう。
また、サブドメインを用いた場合も、メインサイトのペナルティが悪影響をおよぼすかもしれません。事前に確認して、メインサイトがペナルティを受けていると思われるときは、別の独自ドメインを使用することも検討してください。
まとめ
サブドメインを用いると、メインサイトとは別に、新たなWebサイトのトップページ用URLを得られます。これに対して、サブディレクトリは既存サイトの下層ページをまとめて、構造を整理するための仕組みです。
サブドメインとサブディレクトリには、それぞれに適した用途があります。Web制作においてどちらを使うのかに迷ったときは、ユーザーの視点に立って価値あるコンテンツを提供できる方法を選ぶことが大切です。
SEOの観点からは、メインサイトのテーマと合っているかどうかで使い分けるのが基本です。場合によっては、新たに独自ドメインを取得する方法も検討してください。